MOMIJIスタッフインタビュー

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MOMIJIスタッフインタビュー

前回好評だった、MOMIJIスタッフのリレーインタビュー。

 

今回はMOMIJIスタッフの一人、ハンターとして鹿の捕獲も行い、webサイトも担当する工藤について。

 

地域おこし協力隊として着任したところから、早や3年目。今回は質問へのインタビュー形式にしてお届けしたいと思います。

 

きっかけは「地域おこし協力隊」の募集

ー MOMIJIに参加したきっかけはどういうところから?

 

工藤)大学では畜産について学んでいました。今一般的に食べられている牛や豚といった家畜は、もともとお米や小麦が育たないような寒い土地や乾燥した土地で、私たち人間が食べ物を得るための知恵でした。でも現在では、美味しい牛や豚を育てるために、人間も食べることができるトウモロコシや大豆などの餌を育ててたくさん与えて、しかもその餌はたくさんのガソリンを使って海外から輸送している…。このことを知って「なんだか本末転倒になってしまっているな」と思うようになりました。


それで一旦はお肉と関係ない業界で就職したんですけど、売上を上げるために本当はまだ使える部分をたくさん廃棄したりするのを目の当たりにして、「ああ、やっぱりムダが多いなぁ」という気持ちになったのを覚えてます。


そんなとき、大槌町で地域おこし協力隊を募集していることを知って、内容がジビエ活用で地域を活性化するというもので、興味があって、2泊3日のお試し地域おこし協力隊に参加しました。


そのときに知ったのが、シカのお肉ってなかなか有効活用されずに捨てられてしまうということでした。大槌の山で獲れたシカを食材として利用できずに廃棄してしまっている、このお肉を活用していくための仕事をしましょう、という内容だったので、すごく理想的で、私がやりたいことに合っているなと感じました。

 

全国的に見ても、捕獲したシカやイノシシのうち、ジビエ処理施設でお肉として処理して利活用されているのは1割くらいだけで、残りのほとんどがうまく活用できていないと言われています。そんな中で、大槌町でジビエ事業を行うだけでなく、大槌の事例を発信することで全国のジビエ利用率も高めていこうという活動理念に率直に「すごいな」と思いました。


そこから、地域おこし協力隊に応募して、2021年の4月から着任しました。

 

ー ありがとうございます。お試し地域おこし協力隊に参加してみて、参画したんですね。

 

大槌町におけるシカの猟期について

ー シカの猟期はいつからいつまでになるのでしょうか?

 

工藤)「猟期」というのが法律で決まっていて、地域によって違いますが、だいたい11月頃から2〜3月までです。大槌の場合は、シカが増えすぎて困っているので、通常決められている「猟期」に加えて、4月〜10月にも「有害捕獲許可」が町から出されます。それで、大槌町の場合は、「猟期」と「有害捕獲」を組み合わせると通年獲れますよという状態です。

 

ー そうなんですね。その中でもピークにあたるのはいつ頃でしょうか?

 

工藤)MOMIJIに搬入してくれるハンターさんが20人くらいいらっしゃるのですが、搬入が多くなる時期は夏季(7〜8月)になります。反対に、11月以降の猟期に入ると、県内外の他の地域のハンターさんがシカを獲りに大槌に来ることもあります。そうなると、シカの警戒心が高まり、捕獲自体が難しくなる面もあります。

 

ー 他の地域から、大槌町に狩猟に来ても、問題ないのでしょうか。

 

工藤)年度ごとに、あらかじめ狩猟を行う予定の都道府県に狩猟税を納めていれば、問題ありません。

 

ー なるほど。

 

MOMIJIクオリティーとは

ー 「MOMIJIクオリティー」について教えてください。

 

工藤)ジビエの衛生基準については、厚生労働省により「野生鳥獣肉の衛生管理に関するガイドライン」が定められてますが、MOMIJIで買取りするシカについては独自に「MOMIJIプレミアム」という品質基準を設けています。

 

全国的に見ても、他に同じことをやっている業者が見当たらないくらい厳しい基準になっていまして、MOMIJIプレミアムでは、銃を使って一撃で仕留めるということが重要です。仕留めた後、その場ですぐに血抜きをします。早く血を抜くことで、早くお肉の温度を下げることができます。また、血が残っていると獣臭さの原因になるので、きちんと血抜きをすることで獣臭さをなくすことにも繋がります。いかにストレスを与えずに仕留めるかは重要ですね。

 

ー ストレスを感じたシカだとどういう違いがあるのでしょうか。

 

工藤)例えば、追い立てられて隣の山から逃げて来たシカを仕留めた場合だと、仕留めた時のシカの体温が高く、また筋肉には乳酸が溜まっていてたり、筋肉中のエネルギーが使い切られてしまっていてうまくpHが下がらなかったりします。そういった鹿肉は、酸化が進みやすくなったり、雑菌が繁殖しやすくなったり、水っぽくべちゃっとしたお肉になったりするので、可能な限りストレスを与えないことが重要になってきます。

 

ー わかりやすいです。ちなみに、オスだと3歳以下、メスだと4歳以下となっているのにも理由があるのでしょうか。

 

工藤)はい。年齢が上がってくるほど、筋肉の繊維が太くなってくるので、若いシカのほうが肉の繊維がきめ細やかで歯切れも良いですね。あとは、年齢が上がったシカだと、独特の臭いが強くなってしまいます。例えば羊も、ラムとマトンだと臭みが違ったりするように、シカも同様です。

 

私たちMOMIJIでは、シカを食べたことがない人も全員が「美味しい」と思っていただけるように、柔らかくて鹿の臭いの少ない、この「MOMIJIプレミアム」の品質基準を大事にしています。

 

 

 

今のMOMIJIとこれからについて

ー 2023年、新しい工場ができて変わったことや、これまでとの違いなどはありますか?

 

工藤)現在の工場になるまでは、工場が小さく生産効率も低かったので、お届けするまでに時間を要することもありました。でも、新工場になってからは、一日に処理できる頭数も多くなり、鹿肉を保管しておく冷蔵庫・冷凍庫も大きくなったので、お客様をお待たせすることなく、ご注文いただいたらすぐに出荷が整うようになってきています。

 

一方で、気を付けているのは情報共有です。捕獲の時間帯(日の出から日の入りまで)に合わせて工場を稼働させるために、夏は早い人だと朝の4時から、遅い人では夜の9時まで交代制で勤務しています。人によっては顔を合わせる時間帯が2時間くらいしかないこともあるので、積極的にコミュニケーションをとるように気を付けています。

 

ー ありがとうございます。ちなみにMOMIJIさんは大槌町はもとより、岩手県内や県外の飲食店ともお付き合いがあるようですが、どのようにPRを展開されているのでしょうか。

 

工藤)お取引いただいているのは、フレンチやイタリアン、創作料理等、素材にこだわった飲食店様が多いです。シェフ自身が実際に大槌町にお越しになって、シカが育った環境や、その季節ごとに食べているもの、捕獲の現場をご覧になり、そのときに感じたものをお料理に表現して頂く方もいらっしゃいます。ありがたいことに、そうした飲食店様からご紹介いただいて、お取引が増えていった経緯もあります。

 

全国的に見ても、引き合いが多くて供給が追いつかないジビエ業者って、そんなに多くないと思うので、この美味しい鹿肉が少しでも多くの皆さんのお手元に届くように、頑張って期待に応えていきたいです。

 

文:鈴木 広法(local hack) 編集:工藤 秀佳 

 

監修:工藤 秀佳

1996年北海道札幌市生まれ。北海道大学農学部畜産科学科で畜産や食肉について学ぶ。一度は住宅業界で就職するが、やはり食肉に関わる仕事をしたいと思ううちに、大槌町地域おこし協力隊の募集を目にし、大槌ジビエソーシャルプロジェクトの活動内容に惹かれて応募。2021年4月から大槌町に移住し、狩猟免許を取得。活動していく中で農家さん達に出会い、農業被害を減らすことを目的にわな猟を中心に活動。2023年4月からMOMIJI株式会社の社員となり、他地域にジビエ事業を広める「ジビエ塾」の企画運営等を担当。

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  • MOMIJIコラム編集部