ジビエを楽しむことでSDGsに貢献できる? 食を通して、一人ひとりができること

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ジビエを楽しむことでSDGsに貢献できる? 食を通して、一人ひとりができること

近年のジビエブームは味の追求だけではなく、日本各地で深刻化している野生鳥獣による被害、いわゆる『害獣問題(※)』の観点からも注目され、社会全体の関心を集めています。

農林水産省が推進しているのは、ジビエとしての利活用。『害獣』として処分するだけでなく、食材として利用し、さらに革製品やペット用品などに展開していくことで、日本の農林業や農村を守ることにもつながり、持続可能な開発目標・SDGsの実現に貢献できるのです。

しかし、現実には狩猟で捕獲した動物をジビエとして活用させるには、乗り越えなくてはならない壁が数多く存在しています。その証拠に、捕獲した鹿のうちジビエとして市場に出回るのはほんの1割程度。ほとんどが捨てられてしまいます。

今回のコラムでは、都市部に住んでいると実感がわきにくい野生鳥獣による被害について、解説していきたいと思います。

※MOMIJI株式会社を含む大槌ジビエソーシャルプロジェクトに携わるメンバーは、鹿などの野生鳥獣を『害獣』とは考えておりません。農作物被害に対する有害駆除を行う中で「奪った命を価値のあるもの」として活用できるようジビエ事業を推進しています。



知ってほしい、野生鳥獣被害の実態

害獣被害ってどのぐらい? 知っておいてほしい、深刻な現状

日本の「野生鳥獣被害」は、どのくらい深刻なのでしょうか。

野生鳥獣による農作物の被害は年間約160億円で、そのうちの約100億円は鹿とイノシシによるものと言われています。農業を続けていくことが困難となり、廃業する農家も。ただでさえ過疎高齢化が進む農村地域に追い討ちをかけています。

また、森林被害も深刻で、鹿による樹木の剥離被害も多発しています。林業に悪影響を及ぼすだけでなく、希少な植物や地表を覆う草花を食べ尽くしてしまうため、土壌流出にもつながり兼ねません。さらに、狩猟を行うハンターの高齢化が進み、減少の一途をたどっているという問題も。

こうした被害が度重なることで農村が衰退し、ますます野生鳥獣が山から降りて来るようになり、クルマと衝突したり、人里や家屋に迷い込んだり…。これらの被害はほんの一例。野生動物による被害はあまり人の目に触れない農村や森林内でこそ、深刻な影響を及ぼしています。

 

 

狩猟した野生動物が、ジビエとして流通しにくいのはなぜ?

狩猟した野生動物が、ジビエとして流通しにくいのはなぜ?

捕獲した野生動物はどうしてジビエとして流通しにくいのでしょうか。

家畜動物と違い山の中で捕獲するため、ハンターの体力や時間、手間がかかり、時には命の危険も伴います。さらに狩猟した野生動物を、食肉としてクオリティを担保した状態で加工しようとすると、丁寧な「血抜き」と「捌く」作業が必須。加工所までスピーディに運ぶこと(MOMIJIでは1時間以内と定めています)が求められますが、大型の鹿の搬送は想像以上に困難な作業です。

それだけの手間と時間をかけて解体工場に運んできても、食肉にできる部分は家畜よりも少ない傾向にあり、別のものに加工するか、廃棄するしかないため、食肉部分の価格がどうしても高くなってしまいます。結果的にジビエを活用するには、ビジネスとして割に合わず、社会課題への情熱だけでは続けることがむずかしい現実があります。


そこで私たちは、この課題を持続的な仕組みで解決していくために「大槌ジビエソーシャルプロジェクト(OGSP)」を発足しました。



大槌ジビエソーシャルプロジェクト(OGSP)とは

大槌ジビエソーシャルプロジェクト(OGSP)とは

「『害獣』を『まちの財産』に」という想いのもと、全国の地方自治体と協働し、食や教育、観光につなげる「大槌ジビエサイクル」を考案しました。

食肉としてジビエ活用するだけでなく、革や角のクラフト活用、地域に足を運んでもらう観光×食育体験ツアーの開催、最終的には若手ハンターの育成と里山の安全確保、そして食肉販売のさらなる拡大…と、連鎖的かつ定常的な好循環を生み出すことを目指しています。

いただいた命への感謝を忘れずに、このサイクルを全国各地の同じ課題を抱えている地域へと広げようと、民間企業や住民、行政と一体した官民連携の協働事業として活動しています。



OGSPの取り組みが「ジャパンSDGsアワード特別賞」を受賞

OGSPの取り組みが「ジャパンSDGsアワード特別賞」を受賞

プロジェクトスタートから約半年で、復興庁が主催する『新しい東北 復興ビジネスコンテスト2020優秀賞』、さらに2021年12月には『第5回ジャパンSDGsアワード特別賞』を受賞。

さまざまな強みを持った人々と協働し、『害獣』とされてしまった大槌の鹿をジビエとして有効活用する大槌ジビエサイクルの確立と、その活動が同じ課題を持つ地域のロールモデルとなったとして、SDGsの17の目標のうち、以下の5つの項目で評価をいただきました。

SDGsの17の目標のうち、以下の5つの項目で評価をいただきました。

これからの私たちは、世界に向けてこの活動を発信していきます。ひとりでも多くの方に自分ごととして捉えてもらい、ジビエを美味しく食べてほしい。それが社会貢献につながると信じています。

そして、ジビエが好きになったら、ぜひ一度大槌町に来て、「大槌ジビエツーリズム」に参加してください。命をいただくということ、自然と共存すること、都市部にいては絶対に味わえないような、究極の食育体験をご用意してお待ちしてます。



文:國澤芽衣 編集:飯田りえ 編集協力:しかくいまる



藤原朋(ふじわらとも)

監修:藤原朋(ふじわらとも)

株式会社ソーシャル・ネイチャー・ワークス代表取締役。1984年秋田県秋田市生まれ。幼少期から学生時代を宮城県仙台市、山形県山形市で過ごす。大学卒業後、輸入商社などを経て、2011年地元・仙台に戻る。その翌日に東日本大震災が発生。2012年、宮城県石巻市に移住。石巻の食文化をテーマにしたキッチンカーを立ち上げる。2017年、岩手県大槌町の官民連携事業の運営に関わり、大槌町復興推進隊として着任、移住。地元のおばあちゃんから野生鳥獣の有害捕獲について相談を受け、2020年5月、官民連携協働事業「大槌ジビエソーシャルプロジェクト」を発足。

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  • MOMIJIコラム編集部